AFRICAN WAX PRINT(個展2019)
 
 
2019年11月7日木曜日
 
今回の展示で取り上げた布は
AFRICAN WAX PRINT アフリカンワックスプリントです。
WAXとはいわゆる「ろうけつ染」のことで、
ここ数年、パリの布屋さん界隈の「推し布」です。
あらゆる肌の色の国民を有するフランス。
布屋さんにも市場にも、常に人種を意識した品揃えはありますが
布探しでパリを訪れるようになった2001年から
自分の記憶を辿ってみても
こんなにアフリカの布が店頭を賑わしたことはありません。
 
 
インドネシアがオランダ領だった時代
手作業で作られるジャワ更紗を
オランダ本国で「機械ろうけつ染」として
工業的に生産したのがワックスプリントの始まり。
 
 
そしてジャワ更紗の模倣布は、19世紀にヨーロッパからアフリカへ。
今ではアフリカ・ヨーロッパをはじめ、アジアでも生産されています。
今回わたしが使っている布も
フランスで購入したのは間違いありませんが、
果たしてどこの国で生産されたものかは分かりません。
ただ本国アフリカの市場でも
waxと呼ばれるジャワ更紗を模倣しヨーロッパで工業生産した「プリント更紗」
fancyの名で流通する安価な「デジタルプリント」など
価格、品質ともに様々な選択肢が混在しているようです。
 
歴史をほんの少し紐解いただけですが
自分が扱っているプロヴァンス布同様
人の毎日に密接に関わる布という素材には、
国々を巻き込む背景があることも分かりました。
19世紀の産業革命。
ヨーロッパ諸国による植民地化。
ヨーロッパから入りアフリカの市場を席巻したワックスプリント を
一つの植民地支配と捉える考え方もあり
人種や階級の問題を提起するアーティストも存在するほどです。
 
 
 
 
そして今日
アフリカ系のマダムたちが
このワックスプリントをお洒落に大胆にまとい、
パリの街を闊歩する姿は
「ベレー帽にバゲットを抱えたムッシュ」よりも
頻繁に目にするリアルな日常のパリのように思えます。
その歴史や生産地には複雑なものがありますが
「何か文句がありますか?」とばかりに主張してくる布のエネルギーは
アフリカが持つイメージを裏切りません。
(たとえそれがヨーロッパに作られたイメージだとしても)
その魅力のほんの一片ですが、お楽しみ頂ければ幸いです。