パリ・ヴァンヴの蚤の市で、
アンティーク布を売るマダムのトランクの片隅に
クッシャクシャっと入っていた布には
中世らしき時代に働く人々が描かれていました。
カーテンだったのか、何かの作りかけだったのか、
けっして大きい布ではありません。
縫い込んだ部分もあり、生活のシミもありました。
人物の顔も、洗いざらしで消えたのか、もともと描かれていなかったのか。
ただその柄をどうしても見過ごす事が出来ず、
珍しく古い布を購入しました。
門番?ブキニストの走りの本屋さん?
絵だけでは何屋なのか分かりません。
それぞれの絵の下には職業名が書いてあります。
Le marchand de vinaigre (お酢屋さん。樽で量り売り?)
その単語を調べていくうちに、
「les petits métiers parisiens パリの呼び売り人」
という言葉に行き当たりました。
日本語で言えば「行商」が近いのでしょうか。
「プチメチエ」と呼ばれる彼らの仕事。
職種は野菜売り、魚売り、牡蠣売りなどの食料品にとどまらず、
この布には植木売り、井戸掃除、研ぎ師の姿も見られます。
プチメチエは、不況の時代、路頭に迷う失業者や貧しい人々が
少ない資本で最も簡単に始められた仕事でした。
そのことが職種を多種多様にしたのだそうです。
冒頭の写真は直訳すると「水運び屋」でしょうか。
プチメチエの人々の生活は大変な貧困の中にあったとのこと。
でもこの布の中では、みな生き生きと楽しそうです。
(梅田阪急にて)